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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
二
(くそ! くそ!)
一歩一歩、火の粘土を踏むようだった。汗が額ににじんで来る。全身の骨が、ばらばらになるかと思う。
だが、五十鈴川の流れを越え、内宮へ、一歩入ると、何か人心地がまるで変っていた。草を見ても樹を見ても、ここには神のけはいを感じるのであった。――何ごとの在しますかは知らねども――鳥の羽音までが人の世のものではなかった。
「ウムム……」
武蔵は遂に、苦痛に耐えかねたのであろう、風宮の前まで来ると、大杉の根へ、呻きながら、仆れて、自分の脚をじっと抱えた。
二
死んで石と化ってしまったかのように、武蔵はいつまでも動かなかった。体の内からは膿んで膨れ上がった患部が火のような脈を打ち、体の外からは十二月の夜の寒気がひしひしと肌を刺した。
「…………」
武蔵はやがて知覚を失っていた。一体、どういう考えのもとに、突然、旅籠の寝床を蹴って飛び出してしまったのだろうか。こういう苦しみをするのは当然わかっていたことである。
蒲団の中で自然に足の癒るのを待っていては果てしがないから――という病人の癇癪からとすれば、無茶も甚だしい沙汰だ、あまりといえば乱暴である、苦しむだけで、その後のよけいに悪くなるのは知れきっている。