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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
七
「なあに」
「お通さんは、おばばの旅舎へ一緒に行くの?」
お通が返辞をしないうちに、隠居がいった。
「そうじゃ、わしの旅舎はすぐそこの三年坂の下、いつも京都に来ればそこに定めてある。汝には、用もないから、何処へなと、帰るなら帰るがええ」
「アア、おいらは、烏丸のおやしきへ先へ帰っているぜ。お通さんも、用がすんだらはやく帰っておいで」
先へ走りかけると、お通は、急に心細くなったものか、
「お待ち、城太さん」
河原から上がって、彼を追うと、お杉隠居も、もしお通が逃げる心ではないかと狼狽だしたように、すぐ後ろから駈け上がってゆく。
そのわずかな間に、二人は、話し合った。
「ネ、城太さん、こんなわけになって、私はあのおばば様と、旅舎へ行きますけれど、暇を見て、ちょいちょい烏丸様の方へも帰りますから、お館の人たちにそういって、お前は当分、あそこのご厄介になって、私の用事の片づくのを待っていて下さい」
「アア、いつまでも、待っているよ」
「そして……その間に、私も心がけるけれど、武蔵様のいらっしゃる所をさがしてくれません? ……お願いだから」
「いやだぜ、さがし当てるとまた、牛車の蔭へかくれて出て来ないんじゃないか。