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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

佐々木小次郎

一

又八は、頭をかかえた。頭は火みたいに熱かった。仲間のわめいている石曳き歌が、虻に取り巻かれているように耳にうるさかった。

「……五年、五年。アア五年働いていたらどうなるんだ。一日稼いでは、一日分食ってしまい、一日休めば、一日食わずにいなけれやならない」

生唾も出しきって、青ざめた顔を俯向けていた。

――すると、いつのまに来ていたのか、そこから少し離れた所に、藁編みの目の粗い笠を眉深にかぶって、袴腰へ武者修行風呂敷をしばりつけた背の高い若者が、半開きにした鉄扇を、笠のひさしにかざして、熱心に伏見城の地勢や工事のさまを眺めていた。

佐々木小次郎

一

何思ったか、武者修行はそこへ坐りこんだ。面積一坪ほどな平石の前にである。坐ってみるとちょうど机の高さぐらいに肱がつけるのだ。

「ふッ……ふッ……」

焦けていた石の砂を息で吹く、砂とともに蟻の列もふき飛んでゆく。

ふたつの肱をつくと、編笠はしばらく頬杖に乗っている。陽ざかりで、石はみな照り返すし、草いきれは逆さに顔を撫でるし、さぞ暑いだろうに、身うごきもしない。城の工事に眺め入っているのである。

少し離れた所に、又八がいることなどは、意に介さない様子であった。