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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

七

「――わッしょっ」

撓め切っていた良平の腕は唸って、こう大喝をくれながら地摺りに大刀で払い上げた。縒り合せた両手に伸びて行った切っ先は、星を斬ったように高く揚ったに過ぎない。美少年の体は片脚立ちに止まって、ぎりっと反対のほうへ廻って振向いたと思うと、

「オヤ、新手か」

た、た、た、とのめって行く良平へ物干竿をぶんと薙ぎ返した。

烈しいの何のといって、植田良平はまだかつてこんな剣気に吹かれた例を知らない。その殺風から身を交わした代りに、彼は毛馬堤から田圃のほうへ転がっていた。幸いに、堤は低いし、凍っている田圃であったが、戦機を外してしまったことは勿論である。ふたたび堤の上へ出て見た時には、敵の影は獅子奮迅に見えた。長剣物干竿の光が、門下の三名を刎ね飛ばし、さらに進んで、馬上の吉岡清十郎へ迫ろうとしている。

七

自分の身まで来る間に解決するものと、清十郎は安心していたのである。ところが、その危険は、すぐ迫って来た。

ひどい暴剣振りである。物干竿は突進して来た。いきなり清十郎の乗っている馬の脾腹を突こうとする。

「岸柳、待てっ」

こう清十郎は高く叫んだ。そして鐙にかけていた片足をすばやく鞍の上へ移し、その鞍を蹴るがごとく突ッ立ったと思うと、馬は前髪の美少年を躍り越えて、弦を離れた矢のように彼方へ駈け出し、清十郎の体