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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
六
「――荒木田様、ここにおります。お通でございますが、何か、御用でございましょうか」
六
「お通さんか、待たせて済まなかったの。まあお上がり」
氏富は、自分の居間へ彼女を導いて行ったが、坐らぬ前に、
「なんじゃ?」
と、彼女の抱えている大小へ目をみはった。
今朝、子等之館の内塀の蓑掛に、持主の知れないこの大小がかけてあって、ほかの品物とちがい、巫女たちが気味悪がるので、自分が届けに持って来たのですと話すと、荒木田氏富も、
「ホ? ……」
白い眉を顰め、いぶかしげに眺めていたが、
「参拝人のものでもないのう」
「ただの参拝人が、あんなところへ入って来るわけはありません。それに、ゆうべは見えなかったのに、今朝がた稚児たちが見つけたのですから、塀の内へ入って来たのも夜半か夜明けらしいのです」
「ふウむ……」
嫌な顔して、氏富は、口のうちで呟いた。
「ことによるとわしへ思い当るように、神領郷士の者が、嫌がらせにした悪戯かも知れぬな」
「そんな悪戯をしそうな者のお心当りがあるのですか」
「ある! ……実はお汝に来てもろうたのもその相談じゃが」
「では何か、私に関りのあることで」
「気持を悪くなさるまいぞ――こういうわけじゃ。