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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
四
「やあ」
と、何の事もなく笑う。
又八も、
「やあ」
と、同じことをいって、
「燗のつく間、どうですか一献。飲みかけで失礼だが」
「これは――」
すぐ手を出して、
「酒のみという奴、いやしいもので、実は、尊台が、ここで一杯やっているのを見かけると、どうにも、こう……ぷウんと鼻を襲ってくる香が堪らん、袂をひいてな」
いかにも美味そうに飲む男だ。磊落で、豪傑肌らしいと、又八はその飲み振りを見ていた。
四
よく飲む。
又八がそれから一合もやるうちに、この男はもう五合を越えて、まだ慥かりしたものだった。
「どのくらい?」
と訊くと、
「ちょっと一升、落ちついてなら、まあ、量がいえぬ」
と、いう。
時局を談じると、この男は、肩の肉をもりあげた。
「家康がなんだ。秀頼公をさしおいて、大御所などと、ばからしい。あのおやじから本多正純や、帷幕の旧臣をひいたら、何が残る。狡獪と、冷血と、それと多少の政治的な――武人が持たぬ才を少し持っているというに過ぎない。石田三成には勝たせたかったが、惜しいかな、あの男、諸侯を操縦すべく、あまりに潔癖で、また身分が足らなかった」
そんなことをいうかと思うと、