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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
きめつけられた権叔父は、独りで飲んだように真っ赤になった顔の遣り場を失って、てれ隠しに撫で廻し、
「そうじゃ、ほんに違いない」
のそのそ先に軒先へ出てしまう。
その後で始まったらしい。又八をつかまえてお杉隠居の諄々たる訓戒である。この烈しくて脆い女親の憂いと愛は、わが子にその本能を揺り起すと、とても宿屋へ帰るまで待っていられなかった。他人がいようといまいと気にもかけない。――又八はそれに対して憤っとした反抗を顔に示して睨め返している。
いうだけいわせて、
「おふくろ」
こんどは又八からいい出した。
「じゃあ、この俺という人間を、おふくろは結局、意気地なしの腰ぬけの、親不孝者と折紙つけているのだな」
「そうじゃろが、今日まで、汝れのして来た行状のどこに意気地のあるところがあるかよ」
「俺だって、そう見くびった者じゃない。おふくろなどに分るものか」
「わからいでか、子を見ること親に如かずじゃ。汝れのような子を持ったが、本位田家の不作というもの」
「だまって見ていろ、まだおれは若いのだ。婆あめ、悪たれいうて、草葉の蔭から後悔するな」
「オオ、その後悔ならしてみたい。