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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
五
先には、髷だけで許してくれたが、思うに、それでは物足らないのであろう、わしもすこし物足らぬ」
「ほ、ほざいたなっ」
「どうせ手入れにやるこの物干竿、手荒につかうぞっ」
こう宣言をうけながら、その前に硬ばっていた人間は、逃げることができなかった。まるで据物同然に、物干竿の長剣は梨割りにその者を死骸にしてしまった。
五
前の者の背が後ろの者の肩を押し返した。出鼻に先頭の一人が、敵の大太刀の一颯に、無造作な死を目前に遂げたのを見ると、後六名の者は、途端に脳中枢の正確を欠いて、行動の統一を全然失ってしまった。
衆はこうなると一より脆い。それに反して図に乗った前髪の美少年は、竿とよぶほど伸びの利く長剣で、次の者を横に撲った。
腰ぐるまは斬れなかった。しかし撲られただけでも十分にこたえたに違いない。何か一声吠えてその一人は、横ッ飛びに蘆の中へ飛びこんでしまう。
(――次っ)
と睨め廻した時は、さしも戦い下手の同勢も、非を覚って形を変え、五弁の花が芯をつつむように、この敵ひとりを囲み込んでいた。
「退くな」
「退くなよ」
味方同士が、こう励ましあうのだった。そこで多少勝ち目を見出した勢いを駆って、