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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

七

元より最初から長居をするつもりはないし――氏富にそういう迷惑がかかっていては猶さらのこととも考え、お通はすぐ承知して、ふた月余りの恩を謝して、今日にも先の旅へ立ちまする――と答えると、

「いや、そう急がいでもよいのじゃが」

氏富は、いい出したものの、薄々聞いていた彼女の身の上に、ひどく気の毒な心地もして、どう慰めたものかと案じるように、貧しげな手文庫を寄せて、何かつつんでいた。

お通の影のように、いつのまにか後ろの縁へ来ていた城太郎は、その時、そっと首を伸べて囁いた。

「お通さん、伊勢を立つの。おらも一緒に行こうね。――もうここの掃除は飽き飽きしていたところだ、ちょうどいいや、ネ……ちょうどいいよ、お通さん」

七

「わしの寸志じゃ……まことに薄謝だが、お通さん、路銀のたしに納めてくだされ」

手文庫の貧しい中から、氏富は、いくらかの金をつつんでそこへ出した。

お通は、滅相もないという顔つきで、手も触れない。子等之館の巫女たちへ笛を指南したといっても、自分もふた月ほどの間、多分なお世話になっている。謝礼をいただくくらいならばこちらからも宿料を置いてゆかねばなりませんと断ると、氏富は、