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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

三

この間、尋ねて行って、留守を食った宍戸梅軒には、他日の折があればとにかく、強いて出会おうという執着も失せていたが――ここで計らずも会ってみると、これはどうしても梅軒の鎖鎌なるものを一見する宿縁の深いものといわなければならない。

「よほど、ご縁があるとみえる。実は、過日お留守に、雲林院村の尊宅へうかがって御内儀とお会い申した――宮本武蔵という修行中の者ですが」

「ああそうか」

梅軒は、どういうわけか、心得顔で――

「山田の旅籠に泊って、おれと試合をしたいといっていた者か」

「お聞きですか」

「荒木田様の処へ、おれが行っているかと問い合せを出したろう」

「出しました」

「おれは、荒木田様の仕事で行ったには違いないが、荒木田様の家になどいるわけはない。神社町の仲間の仕事場を借りて、おれでなければ出来ない仕事を片づけていたのだ」

「あ……それで」

「山田の旅籠に泊っている武者修行が、おれをさがしているとは聞いたが、面倒くさいので抛っておいた――それはおめえだったのか」

「そうです。鎖鎌の達人とか、噂を聞いて」

「はははは、女房と会ったかい」

「御内儀が、ちょっと、八重垣流の仕型をお見せくだされたが」