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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

「もうふざけては、嫌」

「自分がひとりでふざけているくせに」

「おまえにつり込まれてしまうんじゃありませんか。あら、四軒茶屋の人が、まだこっちを見ている。きっと気狂いだと思ったかもしれませんよ」

「あそこへ戻ろう」

「何しに」

「お腹が減ッちゃった」

「まあ、もう?」

「お昼のお握飯を、ここで半分喰べておこう」

「いいかげんにおしなさい。まだ二里とは歩いていないんですよ。城太さんと来たら黙っていると、日に五度ぐらい喰べるんですもの」

「そのかわりおらは、お通さんみたいに、山駕籠に乗ったり、駄ちん馬に乗ったりしないからね」

「きのうは、関へ泊ろうと思って、無理に暮れ方をいそいだからですよ。そんなこというなら、きょうはもう乗らない」

「きょうはおらが乗る番だ」

「子どものくせに、なアに」

「馬に乗ってみたいんだよ、ねえお通さんいいだろ」

「きょう限りですよ」

「四軒茶屋に、駄ちん馬がつないであったから、あれを借りて来よう」

「いけません、いけませんよ、まだ」

「嘘いったのかい」

「だって、くたびれもしないうちに馬に乗るなんて、贅沢すぎます」

「そんなこといったら、おらなんか、百日千里歩いても、くたびれることなんてないんだから、乗る時はありやしないぜ。