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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

毛馬堤で、実際に見ている小次郎の剣に対しては、十分、尊敬を払ってはいるが、ほかの趣味とか処世のほうとかにおいては、やはり乳くさい点が多分に見える小次郎だった。やはり年齢は年齢だけのものだという半面が、あれから後、たとえ三、四日の間でも一つ邸に住んでみるとよくわかった。

――で、清十郎は、彼に対して、人間的な尊敬は大して払わないかわりに、交際いは、かえって仕よい気持がして、この数日ですっかり親しみを加えていた。

「はははは」

小次郎は笑って、

「それは拙者がまだ、幼稚だからですよ、今に女のほうでも覚えれば、猿などは捨てて顧みなくなるでしょう」

といった。

それから小次郎が、暢気な雑談をはじめると、清十郎は反対に、なにか落着かない顔いろが濃くなってゆく。自分の拳にすえている放鷹の眼のように、たえず焦々するふうが眸の底に光るのである。

「なんだ、あの虚無僧めは。……さっきから、吾々のほうをじっと見て、立ちどまっておる」

ふいに、咎めるように清十郎がつぶやくので、小次郎も振り顧って見たのである。清十郎が、うさん臭い眼をやって睨めつけたのは、もちろん、その時まで、ぼんやりと彼方に佇んでいた青木丹左で、丹左はそれと共に、背を向けて、とぼとぼと向うへ歩き出していた。