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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

六

「わたくしは、それゆえに、あなたへ、鷹でも放って、悠々と、気を養うことをおすすめ申したわけだが、あなたのご気質では、それができないとみえる」

「だんだん噂をきくと、武蔵というものは、そう見くびれない敵らしいのじゃ」

「しからば、なおさらこちらは、迫らず、慌てず、心を練っておかねばなりますまい」

「なにも慌てているわけではないが、敵を侮るということは、兵法のもっとも誡めるところだ。試合までに十分、練磨をしておくのは当然じゃと拙者は思う。その上で、万一にも、敗れを取るようなことがあったとすれば、これは、最善を尽しての負けだ、実力の差だ、どうも致し方はないが……」

小次郎は、清十郎の正直さには好意を持てるが、気宇の小さなところが同時に見え透いて、これではとても、吉岡拳法の名声と、あの大きな道場とを、永くうけ継いで行ける器量ではない――と秘かに気の毒に感じるのだった。

(まだ、弟の伝七郎のほうが、ずっと線が太い)

と、思う。

だが、その弟と来ては、これは手のつけられない放縦で、腕は兄の清十郎よりも強いそうであるが、家名もへちまもない、いわゆる責任なしの次男坊にでき上っている。