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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
――にも関わらず、なんとなく、先頃からふと怯みを感じたり、心の整いがつかないのは、自分が、兵法の研磨を怠っているためではなく、身辺の雑事に煩わされているためと、彼自身も解釈している。
朱実のことが、その一つの原因というよりは最も多く、あの後では、彼の気もちを不愉快にしていたし、武蔵からの挑戦状で、あわてて京都へ帰ってみれば、祇園藤次が逐電してしまうやら、また家政の癌はこの年暮へ来ていよいよ重体なもようとなり、日々、掛取に押しかけられるようで――清十郎の心は、心構えを持つ遑がない。
ひそかに、頼みにしていた佐々木小次郎も、ここへ来て、顔を見せなくなってしまった。弟の伝七郎も寄りつかないのである。彼は、もとより武蔵との試合に、自分以外の助太刀を必要とするほど敵を大きく見てはいないが、それにしても、今年の年暮はさびしい気がしないでいられなかった。
「ご覧ください。これでよかろうと思いますが」
植田良平たちが、別室から、新しく削った白木の板へ、高札に立てる文言を書いて来て、彼の前へ示した。――見ると、まだ水々と墨は濡れていて、
答示
一つ、望みに依り試合申す事