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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

その自責からする折檻は、又八を撲った数よりも遥かに多い。又八は呆っけにとられていたが、青ぶくれになった虚無僧の額から血がにじみ出て来たので、止めずにいられなくなった。

「ま、ま、止したらどうだ、そんな無茶な真似」

「措いて下され」

「どうしたんだい」

「どうもせぬ」

「病気か」

「病気じゃござらぬ」

「じゃあなんだ」

「この身が忌々しいだけじゃ。かような肉体は、自分で打ち殺して、鴉に喰わせてやったほうがましじゃが、この愚鈍のままで殺すのも忌々しい。せめて人なみに性を得てから、野末に捨ててやろうと思うが、自分で自分がどうにもならぬので焦れるのじゃ。……病気といわれれば病気かのう」

又八は、何か急に気の毒になって来て、そこらに落ちている金を拾いあつめて、幾らかを彼の手に握らせながら、

「おれも悪かった、これをやろう。これで勘弁してくれ」

「いらん」手を引っこめて、

「金など、いらん、いらん」

鍋の残り飯でさえ、あんなに怒った虚無僧が、けがらわしい物でも見るように、強く首を振って、膝まで後へ退がってゆく。

「変な人だな、おめえは」

「さほどでもござらぬ」

「いや、どうしても、少しおかしいところがあるぜ」