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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

煙管にまで、太閤張というのが出来て、一頃は流行ったように、こういう派手派手しい風俗も、桃山全盛の遺風であって、二十歳をこえても元服をせず、二十五、六を過ぎても、まだ童子髪を結って金糸をかけ、さながらまだ清童であるかのような見栄を持つ習いが、いまに至ってもかなり遺っているからである。

だからこの少年も、一概に身なりをもって、未成年者と見ることはできない。体つきからしても、堂々たる巨漢であるし、色は小白くて、いわゆる丹唇明眸であるが、眉毛が濃くて、眉端は眼じりから開いて上へ刎ねている。なかなかきつい顔なのだ。

けれどまた――

「これ、なぜうごく」

と、小猿の頭を打って、猿の蚤とりに他念のない様子などは、なかなかあどけなくもある。何もそう年齢の詮索ばかり気にやむこともないが、あれこれ綜合してその中庸をとって推定すれば、まず十九か、二十歳というところでなかろうかと思われる。

さてまた、この美少年の身分はというと、元より旅いでたちで、革足袋にわらじ穿きだし、どこといって抑えどころもないが、歴乎とした藩臣でなく、牢人の境界であることは、こういう船旅において、ほかの山伏だの傀儡師だの、乞食のようなボロ侍だの、垢くさい庶民の中に交じって、気軽にごろごろしている態をみても、およそ想像はつく。