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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
(――ゆうべさる方にて習い申しそろ儘、名古屋の石曳きうた書きつけて参らせそろ)
とあって、その歌詞に
われが殿衆は
藤五郎さまじゃに
粟田口より
石また曳きゃる
エイサ、エイサ
コロサと曳きゃる
お声きくさえ
四肢がなゆる
まして添うたら
死のずよの
(――老も若きもうたい囃しそろ。これにてなくば、うき世なるまじく見え候)
労働歌が絃歌になり、蜂須賀侯のような大名までが、夜興の口誦みに戯れたものとみえる。
街に歌がさかんになりだしたのは、何といっても太閤の世盛りからだった。室町将軍の頃には、歌があっても廃頽的な室内のものだけだった。その頃は、児童がうたう歌まで、ひがみッぽい暗い歌が多かったが、太閤の世になってからは、歌も明るくなり大きくなり希望的になって、民衆はそれを汗をかきながら太陽の下でうたうことを甚だ好んだ。
関ヶ原の役の後、社会文化に家康色がだんだん濃くなってくると、歌もすこし変って来て、豪放さはうすくなった。太閤様のころには、民衆からひとりでに歌が湧いてきたが、大御所の世間になってからは、徳川家付の作者が作ったような歌が民衆へ提供されて来た。
「……ああ、苦しい」