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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
見ると、自分で水馴れ棹を突いていた前髪の美少年が、その棹を、蘆の中にとんと突いたと思うと、先に跳んだ小猿よりも軽く、弾みを与えた自分の体を、岸の彼方へ難なく送っていたのであった。
「やっ?」
すこし方角が違ったので、七名は一斉にそっちへ向き直った。さんざん待ちかまえていたことではあるが、咄嗟の場合と差のない焦心がどの顔にも引ッつれていた。円を作って相手へ迫る遑がなく、そのまま、岸に沿ってだっと向って行ったので、当然、彼らの陣形は縦隊になり、それを受けるところの前髪の少年をして、十分な気構えを持たせる余地を敢て与えてしまった。
真っ先になってしまった縦隊の者の頭は、もう怯んでも退けない位置である。途端に眼は充血し耳は聞えなくなっていた。平常の剣法の修練などはてんで意識にものぼらないのである。カッと歯を剥きだして、食いつくように前髪の影へ刀を差し出して行った。
「…………」
たださえ巨きい美少年の体躯は、その時、つま先で伸び上がるように胸を張り、右手をぐっと肩の上にやった。背に負っている大刀の柄を握ったのである。
「吉岡の門人どもだといったな。望むところだ。