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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
「よろしいか」
武蔵は手をのばして、その一挺を壁の角掛から外し、手に取って仔細に見た。
「――なるほど、これが近頃だいぶ用いられている鎖鎌か」
ただ握ってみれば、腰にも差せる一尺四寸ほどの棒に過ぎない。棒の先の環から長い鎖が垂れていて、その鎖の端には、ぶんと振れば、人間の頭蓋骨を砕くに足る鉄の球がついている。
「ははあ、ここから鎌が出るのか」
棒の横にミゾが彫ってあって、中に潜んでいる鎌の背が光っている。爪をかけて引き出すと、鎌の刃は横に身を起して、これは優に人間の首を掻くことのできる刃渡りを備えているのだった。
「ム……こう使うのだな」
左に鎌を持ち、右の手にくさりのついた鉄球をつかんで、武蔵は仮の敵をそこに想像しながら、構えを作って、独り考えていた。
するとふと、手枕を外してこっちへ眼をくれた女房が、
「なんじゃあ、まあ、そのかたちは」
と、乳ぶさをしまいながら土間へ下りて来て、
「そんな形していたら、すぐ太刀を持った相手に斬られてしまう。鎖鎌というのはこう構えるのじゃ」
武蔵の手から引っ奪くると、そのつまらない百姓鍛冶屋の女房がひたと鎖鎌を持って、体の仕型を見せた。