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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
風車
一
あそこへ行って拝んでいらっしゃい」
「だって……。みんなが見てるんだもの」
「じゃ皆さん、後ろを向いていてお上げなさい、私も、後ろを向いているから――」
と一列に揃って、城太郎のほうへ背中を向けた。
「……いいでしょう、これなら」
お通がいったが、返辞をしないので、そっと背の方をのぞいてみると、城太郎は駈け足で玉串御門の前まで行き、そこに立って、ぴょこんとお辞儀をしていた。
風車
一
冬の海へ向って、つぼ焼やの縁台へ腰かけ、足拵えを直しているのは武蔵であった。
「旦那、島巡りの相客があるがのう、まだ二人ほど足らんのじゃ、乗ってくださらぬか」
と、船頭がそこへ突っ立ってすすめていた。
貝を入れた籠を腕にかけて、ふたりの海女も先刻から、
「旦那はん、お土産に、貝を持って行かしゃれ」
「貝を買うておくれなされ」
「…………」
武蔵は、血膿によごれた足のボロを解いていた。あれほど悩ませた患部は、すっかり熱も腫れもひいて、平べったくなっていた。白くふやけた皮に、ちりめん皺が寄っているだけだった。
「いらない、いらない」
手を振って、海女や船頭を退けながら、彼は、ふやけたその足で砂を踏みしめ、波打際へ行ってザブザブと潮の中へ足を浸した。