轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
いいすてて、梅軒は猿のように山の腹を横に駈け、やがてどこから降りて行ったものか、甲賀谷の渓流へ降りて、遥かからこちらの崖を振り向いていた。
その小さい影が彼方に立ちどまって、口元へ手をかざし、
「野洲川で落ち合うのだぞ、おれは間道を追ってゆくから、てめえ達は、街道のほうを、なお入念に、見てゆけよう」
こっちの手輩が、
「わかったあ」
と、谺を返すと、梅軒は、雪の斑な谷間を、雷鳥が歩くようにぴょいぴょいと岩間づたいに遠く去ってしまった。
よぼよぼな老馬といえども、死にもの狂いに狂い出すと、下手な手綱ではもう止まらない。
いわんや乗手は城太郎。
臀に松火をつけられているように、真っ赤な傷口を持っている例の奔馬は、あれから盲滅法に駈けだして、八百八谷という鈴鹿の山坂を、またたく間に駈け通し、蟹坂を突破し、土山の立場を突っ切り、松尾村から布引山のすそを横にして、まるで一陣のつむじ風が通って行くかのような勢いで止まるところを知らなかった。
よく落ちないでいるのはその背の上の城太郎で、
「あぶないっ、あぶないっ、あぶないっ」
を、呪文のように叫びつづけながら、もうたてがみへつかまっているのでは間に合わなくなって、馬の平頸へ、眼をつぶって、抱きついていた。