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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
小次郎は、その弟にも紹介はされたが、てんで肌合がぴったりしないし、かえってお互いに最初から妙な反感さえ抱いてしまった。
(この人は、正直だ、だが小心だ、助けてやろう)
こう考えたから小次郎は、わざと、鷹を持ち出して、武蔵との試合などは、念頭から忘れるように、わざと側から仕向けているのに、当の清十郎の身になると、そう悠然とは、構えていられないらしいのである。
――これから帰って大いに練磨するのだという。その真面目さはいいが、いったい、武蔵と会うまでに、これから幾日その練磨ができるのかと、小次郎は、訊きたい気がする。
(しかし、性分だ……)
こういうことは、助太刀にならないことを小次郎は痛感した。――で、黙々と帰り途につきかけると、今し方まで足もとにいた茶色の狩犬がいつのまにか見えない。
――わん、わんっ、わんっ。
遠くのほうで猛々しい啼き声がしているのだった。
「ア、なにか獲物を知らせているらしい」
小次郎は、そういって、ひとみを輝かしたが、清十郎は、いらざる犬の働きといわないばかりに、
「捨ててゆこう、捨ててゆけば、後から追いかけて来るだろうから」
「でも……」