轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
二
「わかってるよ、嫉妬をやいてるんじゃないか」
「そんな……そんなことだけではありません……私の今の気持というものは」
「いいからお出でッてば」
牛車の蔭から、お通のからだはズルズル地を摺ってうごき出した。綱曳きでもするように踏んばりながら、城太郎はまた彼方へ伸び上がって、
「アッ、もういないよ、朱実はもう去ってしまった」
「朱実。――朱実って、誰のこと?」
「今、あそこで、武蔵様とならんでいた女さ。……あっ、武蔵様も歩き出した、早く来ないと、行ってしまう」
もう女などに関っていられないとばかりに、城太郎が走りかけると、
「待ってよ、城太さん」
お通も、自分で立った。
そこで彼女はもういちど、五条大橋の袂を見直した。朱実がまだその辺にいるかいないかを確かめるもののように細心な眼で見まわしているのだった。
怖ろしい敵の影が去ったように、お通は眉をひらいて、ほっとした様子をしてまた、慌てて牛車の蔭へ寄ると、泣き腫らした瞼を袖口で拭いたり、髪を撫でつけたりして、身じまいを整えていた。
城太郎は、急いて、
「早くしなよ、お通さん。――武蔵様は河原へ降りて行ったようだぜ、お洒落なんかしなくてもいいじゃないか」