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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
といった顔つきして、風雅と遊里の両方に身をやつして暮しているが、その手から、いざという場合には、猛然と起って、
(太閤御恩顧のため)
という旗じるしの下に集まろうという牢人が、七百や八百は飼ってあって、その生活費も、秀頼のお手元金から出ているのだということも聞いた。
又八は、二月ほど、大坂を見聞しているうちに、
(ここだ。出世のつるをつかむ土地は)
と、まず興奮を抱いた。
空脛に、槍一本かつぎ出して、宮本村の武蔵と、関ヶ原の空をのぞんで飛び出した時のような壮志が、久しぶりに、近頃、健康になった彼の体にも、甦って来たらしいのである。
ふところの金は、ぼつぼつ減ってゆくが、何かしら、
(おれにも運が向いてきた)
という自覚がして来て、毎日が明るくて、愉快だった。石に蹴つまずいても、そんな足下から、不意にいい運の芽が見つかりそうな気がするのである。
(まず、身装だ)
彼はいい大小を買って差した。もう寒さにかかる晩秋なので、それにうつりのよい小袖と羽織も買った。
旅籠は、不経済と考えて、順慶堀に近い馬具師の家の離れを借り、食事は外でし、見たいものを見、家へは帰ったり帰らなかったり、好みどおりな生活をしている間に、よい知己を得、手づるを見つけ、扶持の口にありつこうと心がけていた。