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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
この程度に、生活を持していることは、彼としては、かなり自戒を保って、生れ変ったほど、身を修めているつもりなのである。
(あれへ大槍を立たせ、乗換え馬を牽かせ、供の侍を、二十人も連れて通りなさる。――今では大坂城の京橋口に御番頭として詰めてござるが、順慶堀の川ざらいには、土をかついでござった牢人衆であったに)
そんなうらやましい噂を、町ではよく聞くが、さて、又八がだんだんに見るところでは、
(世の中というやつは、まるで石垣だ、きっちりと、使われる石は組んであって、後から入る隙はねえものだ)
すこし疲れて来たが、また、
(なあに、蔓の見つからねえうちが、そう見えるんだ、うまく、割り込むまでが、むずかしいが、何かへ取ッついてしまえば)
と思い直して、間借している馬具師のおやじへも、就職をたのんでおいた。
「旦那がたあ、お若いし、腕もおできなさるじゃろうし、御城内の衆へ頼んでおけば、すぐお抱えの口はありましょうで」
ありそうな口吻で、そこの馬具師も安うけあいしたが、就職はなかなかかかって来ない。――そのうちに冬も十二月、ふところの金も半分になっていた。
三
繁華な町なかの空地の草にも、朝々霜が真っ白におりる。