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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
「そして今では、何していやるか。身装は、どうやら飾ってござるが、仕官して、禄の少々も、取っていやるか」
「はい」
うっかり、いい返事をしたが、又八は、露見をおそれて、
「いや、仕官はいたしませぬが」
「では、何で喰べている」
「剣――剣術などを、教えまして」
「ほう」
婆は、初めて、綻びたように機嫌よく、
「剣術を、おおそうかいの。そういう生活を過ごしながらも、剣術に精出していやったとは、さすがにわしが子。……のう叔父御よ。やはり婆が子じゃの」
この辺で機嫌を直させてしまいたいものだと権叔父は、大きく何度もうなずいて、
「それやあ、ご先祖の血は、どこかにあろうわさ。一時の極道はしようとも、そのたましいだに失わずば」
「して又八」
「はい」
「この上方では、誰について、腕を磨きやった」
「鐘巻自斎先生に」
「ふウむ……あの鐘巻先生にの」
目も鼻も飴のようにしてあまり喜ぶので、又八はもっと喜ばせてみたくなり、懐中の印可の巻を出して巻末の一行――佐々木小次郎殿とあるところだけを隠して、
「御覧じませ、この通り」
と、常夜燈の明りへ、展げて見せた。
「どれ、どれ」
手を出したが、渡さずに、