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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
「わかったかよ又八。この婆や権叔父が、故郷を出て、こうして諸国をあるいている意気地が。――息子の嫁を奪って逃げた武蔵、本位田家に後足で砂をかけて失せたお通。――こう二つの首を打たいでは、婆は、ご先祖のお位牌と、故郷の衆にむかって、会わせる顔がないじゃろが」
「わかりました。……よく」
「おぬしにも、それではのめのめと、故郷の土は踏めまいが」
「帰りません、もう、帰りません」
「討ってたも、怨敵を」
「ええ」
「気のない返辞をするものかな、おぬしには武蔵を討つ力がないと思うてか」
「そんなことはありません」
権叔父も、そばから、
「案じるな又八、わしもついているのじゃが」
「この婆とても」
「お通と武蔵、二つの首を、晴れて故郷への土産に引っさげて戻ろうぞ。のう又八、そうしておぬしにはよい嫁女をさがし、あっぱれ本位田家の跡目をついで貰わにゃならん。そうした上は、武士の面目も立つ、近郷への評判もようなる、まず、吉野郷で負け目をとる家統は他にはあるまいてな」
「さあ、その気になってたも。なるかよ又八」
「はい」
「よい子じゃ、叔父御、賞めておくりゃれ。きっと武蔵とお通を討つと誓うた。