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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
船は毛馬堤へかかっていた。
ここには繋い杭とホッ立て小屋がある。毛馬村の船着と見て、七名は、ばらばらとそこへ先廻りして降口を扼して待っていた。
――だが船は遠く河心に止まっていて、ぐるぐる廻っているのだった。客も船頭も、事態の容易ならぬものを案じて、着けないほうが無事であると主張しているらしいのである。吉岡門下の七名はそれと見て、
「こらッ、なぜ着けぬ」
「明日も明後日も着けずにいられるか。後で後悔するな」
「その船を寄せぬと、乗りおうている奴ばら、一人あまさず打ち斬るぞ」
「小舟で行って、斬り込むがよいかっ」
あらゆる脅し文句をそこから放っていると、やがて、三十石船の舳が此方の岸へ向き直ると共に、
「やかましいっ!」
沍寒の大河を裂くような一声が彼方にあって――
「望みにまかせて、今それへ参ってやるから、腰のつがえを定めて待っておれ」
見れば前髪の若者自身が、水馴れ棹を取って、頻りと止める船頭や客を尻目に、ぐいぐいと棹の水を切ってこなたの岸へ船を突き進めて来るのであった。
四
「――来るぞ」
「命知らずめが」
柄に手をかけて、七名は、船のぶつかって来る岸の辺りの岸辺を囲んでいた。