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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
「あら、なんじゃろ?」
ぞろぞろと裏門から今、それへ出かけてゆく清女たちの群れの中で、一人が見つけ出したのである。
夜のうちに、武蔵がそこの蓑掛の釘へかけて行った大小と武者修行風呂敷。
「誰のやろ?」
「知らんがな」
「お侍さまの物や」
「それは分っているが、どこのお侍様やら?」
「きっと、泥棒が忘れて行ったのじゃろが」
「ま! さわらぬがよい」
まるい眼を瞠り合って、牛の皮をかぶった盗人の昼寝でも見つけたように、取り囲んで固唾をのむ。
そのうちに、一人が、
「お通様にいうて来よか」
と、奥へ走って行って、
「お師匠さまお師匠さま、たいへんですよ、来てごらんなさい」
欄の下から呼ぶと、寮舎の端にある一室から、お通は机へ筆をおいて、
「なんですか」
窓を開けて顔を出した。
小さい巫女は指さして、
「あそこへ、盗人が、刀と風呂敷を置いてゆきました」
「荒木田様へお届けしておいたらよいでしょう」
「だけど、みんな触るのを、怖がっているから、持って行かれません」
「まア、たいした騒ぎようですね。じゃあ後から私がお届けしに行きますから、皆さんは、そんなことに道草をしないで、はやく学問所へお出でなさい」