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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
「つまり、また戦か」
「こうなっちまったものを、今さら、戦のない方へ、世の中を向け直そうとしても、力に及ぶまい」
「大坂でも、諸国の牢人衆へ、手をまわしているらしいな」
「……だろうな、大きな声ではいえねえが、徳川様だって、南蛮船から銃や弾薬をしこたま買いこんでいるというし」
「それでいて――大御所様のお孫の千姫を、秀頼公の嫁君にやっているのはどういうものだろ?」
「天下様のなさることは、みな聖賢の道だろうから、下人にはわからねえさ」
石は焼けていた。河の水は沸いている。もう秋は立っているのだが、暑さはこの夏の土用にも勝って酷しい。
淀の京橋口の柳はだらりと白っぽく萎えている。気の狂ったような油蝉が一匹、川を横ぎって町屋の中へ突き当ってゆく。その町も晩の灯の色はどこへか失って、灰を浴びたような板屋根が乾き上がっているのだった。橋の上下には、無数の石船がつながれていて、河の中も石、陸も石、どこを見まわしても石だらけなのである。
その石も皆、畳二枚以上の巨きなものが多かった。焼けきった石の上に、石曳きの労働者たちは、無感覚に寝そべったり腰かけたり仰向けに転がったりしている。