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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
三之丞は、満足のていで、
「野洲川の野武士といえば、あれでもこの頃は、ずいぶんおとなしくなった方だ。あれに狙われては、この山街道から無難に出ることは恐らくできまい。――だが、最前この小僧から話をきけば、おまえたちの案じている宮本武蔵という者、心得のある者らしいから、むざむざその網にかかるようなドジも踏むまい」
「この街道のほかに、まだ江州路へ出る道が、幾すじもありましょうか」
「あるとも」
三之丞は、真昼の空に澄んでいる冬山の嶺を仰ぎまわして、
「伊賀谷へ出れば、伊賀の上野から来る道へ。――また安濃谷へ行けば、桑名や四日市から来る道へ。――杣道や間道が、三つぐらいあるだろう。わしの考えでいえば、その宮本武蔵とかいう男は、逸はやく、道をかえて危難を脱していると思うが」
「それならば、安心でございますが」
「むしろ、あぶないのは、おまえ達二人のほうだ。折角、山犬の群れから救ってやったのに、この街道を、ぶらぶら歩いていれば、いやでも野洲川ですぐまた捕まってしまう。――すこし道は嶮しいがおれについて来るがいい、誰も知らぬ抜け道を案内してやろう」
三之丞は、それから甲賀村の上を通して、大津の瀬戸へ出る馬門峠の途中まで一緒に来て、つぶさに道を教え、