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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

すこし落着いてくると、朱実は、不潔も気にならなくなり、彼の生活に、彼と同じ気安さが持てて来るのだった。

「そうそう熱があって、身体がだるいといっていたの、おおかた風邪だろう。蕎麦掻きのできる間、そこに寝ていさっしゃれ」

むしろだの、米俵だので、隅へ寝どこができている。朱実はそこにある木枕へ、自分の持っている紙を当てて、すぐ横になった。

上からかぶる衾のかわりに、それへ備えてあるのは、これもどこかで拾って来たものらしい、破れた紙衣蚊帳。

「じゃあ、お先に」

「さあ、さあ、なにも心配しないがいいぞよ」

「……すみません」

と、手をつかえる。そして、渋紙の蒲団を引き被ごうとすると、その下から、なにか電光のような眼をした生き物が飛びだし、自分の頭を越えたので、彼女は、きゃっといって俯伏した。

二

だが、驚いたのは、朱実よりは、むしろ青木丹左のほうで、鍋へ空けかけていた蕎麦粉の袋を取り落して、

「アッ、なんじゃっ?」

膝をまっ白にしてしまった。

朱実は打ち伏したまま、

「なにか――なんだか知れませんが、鼠より、もっと大きな獣が、隅から飛び出して……」

いうと、丹左は、