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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
たものだと、勿体をつけていう。
ない――と反対する者は、
(ばかなことをいっては困る。武芸者が、そんな児戯に類したもののあるなしを論じるだけでも恥かしい)
と、兵法の正道論に拠って、
(漢土から来た織女や縫工女が、そんなことを遊戯にやったかどうかは知らんが、遊戯はどこまでも遊戯で、武術ではない。第一、人間の口中には、唾液というものがあって、熱い、冷たい、酢い、辛い、というような刺激は程よく飽和するが、針の先を、痛くないように含んでいることはできまい)
すると、一方は、
(ところが、それができるのだ。もちろん、修練の功だが、何本も唾液につつんで口にふくみ、それを、微妙な息と舌の先で、敵のひとみへ吹くことができる)
と主張する。
それに対して、反対者は、よしんば出来たところで、針の力である、人間の五体のうち、ただ、眼だけが攻撃の焦点ではないか、その眼へ針を吹いても、白眼の部分ではなんの効もない。眸の真ン中を刺したら、初めて、敵を盲目にすることが出来るだろうが、それにしても、致命的なものではない。そんな婦女子のする小技が、どうして発達するいわれがあろうと反駁する。