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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
と、お通の肩をもち、
(お師匠様もお師匠様だ)
わがことのように腹を立てて、その結果が、
(お通さんは何してるんだろ。お通さんにいいつけてやるぞ)
という焦躁を帯びて来ると、急に橋の上下をキョロキョロし始めたものだった。
ところが、そのお通が見当らないので、城太郎が独りでやきもきしていると、彼方の男女は、往来の眼を憚るように、橋のたもとに近い欄干へ身の位置を移して、武蔵もその上に腕拱みを乗せ、朱実も並んで、河原の下へ面を俯向けている。
反対側の欄干に沿って、城太郎が通り抜けて行ったのも、男女の背中は気づかなかった。
「愚図だな、いつまで、観音様なんか拝んでるんだろ」
城太郎は呟きながら、五条坂の方へ背伸びをして、待ち焦れていた。
すると、彼の佇立んでいるところから十歩ほどの距離である、幹の太い四、五本の枯柳があった。よくこの柳には川魚を啄みに来る白鷺の群れを見かけるのであるが、きょうはその白鷺が一羽も影を見せていないかわりに、前髪に結った一人の若衆が、臥龍のように低く這っている老柳の幹へ倚りかかって、じっと、何ものかを見つめていた。
三
朱実と並びあって橋の欄へ肱を倚せていた武蔵は、朱実が懸命になって向ける囁きへ、いちいち微かに頷いてはいるけれど、彼女が女の羞恥もすてて、真実の二人になり切ろうと全能で脈搏して