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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
と、教えてくれた。
富田主水正とは何かと訊くと、秀頼公の兵法師範役のうちの一人で、たしか、越前宇坂之庄の浄教寺村から出た富田入道勢源の一族の者だったと思うがという話。
すこし、あいまいな気もしたが、とにかく大坂へ出るつもりだし、又八は、市街へ入るとすぐ、目抜きの町の旅籠へ泊って、そんな侍が御城内にいるか否かを訊いてみると、
「はい、富田勢源様のお孫とかで、秀頼公のお師範ではありませんが、御城内の衆に兵法を教えていたお方はございましたが、それはもう古い話で、数年前に越前の国へお帰りになっております」
これは、宿の者のいうところだった。町人とはいえ、城内の用勤めもしている家の者のいうことであるから、前の侍のことばよりはよほど真実味のある話だった。
宿の者の意見ではまた、
「――越前の国まで、尋ねておいで遊ばしても、主水正様が、今も果たしてそこにいるかどうかも分りませんから、そんな頼りのない方を遠国までたずねてゆくよりは、近頃、有名でいらっしゃる、伊藤弥五郎先生をおさがしになるのが近道でございましょう。あの方もたしか、中条流の鐘巻自斎という人のところで修行なされて、後に、一刀流という独自な流儀をお創めになったのですから」