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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
「どうです、儲かるでしょう」
「儲かりませんよ、堺はひどく景気がいいというが」
「鉄砲鍛冶など、職人が足らなくて弱っているそうですな」
べつの商人が、また、
「てまえは、その戦道具の、旗差物とか、具足など納めていますが、昔ほど儲かりませんて」
「そうかなあ」
「お侍方がそろばんに明るくなって」
「ハハア」
「むかしは、野武士がかついで来る掠め物を、すぐ染めかえ、塗りかえして、御陣場へ納める。するとまた、次の戦があって、野武士がそいつを集めてくる。また新物にするといったふうに、盥廻しがきいたり、金銀のお支払いなどもおよそ目分量みたいなものでしたがね」
そういう話ばかりが多い。
中には、
「もう内地では、うまい儲けはありっこない。呂宋助左衛門とか、茶屋助次郎といった人のように、乗るか反るかで海の外へ出かけなければ」
と、海洋をながめて、彼方の国の富を説いている者があるし、或る者はまた、
「それでも、何のかのといっても、わしら町人は、侍から見れば遥かに割がよく生きていますよ。いったい侍衆なんて、食い物の味ひとつ分るじゃなし、大名の贅沢といったところが、町人から見ればお甘いもので、いざといえば、鉄と革を鎧って、死にに行かなければならないし、ふだんは面目とか武士道とかにしばられて、好きな真似はできないし、気の毒みたいなものでござい