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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
「ごらんなさい、小猿のやつも、帆ばしらの上で骨牌をめくる真似をしている」
ヒラヒラと、そういう顔の中へ一枚の札が落ちて来た。
「畜生」
堺の商人のひとりが、あわててそれを拾いあげたが、
「まだ足らない。もう三、四枚持っているはずだ」
他の連中も口々に――
「誰か、猿のやつから、札を奪り返して来いやい。博戯が出来ぬ」
「どうして、登れるものか、あんな高いところへ」
「船頭なら」
「それや登るだろう」
「金をやって、船頭に取って来てもらおうじゃないか」
そこで船頭は、金をもらって、承諾はしたが、海上では司権者である船頭として、一応、この事件の責任を問わなければならないという顔つきで、
「お客衆」
と、荷物のうえに上がって、船客たちを見まわし、
「――あの小猿は、いったい誰の飼い猿じゃ、飼い主はここへ出てもらおう」
といった。
どこからも、おれのだといって名乗り出る者がない。しかし、その辺にいた客はみな知っている。例の美少年のすがたへ期せずして一同の眼が注がれた。
船頭も知っていた筈だ。そこで当然業腹が煮えてきたに違いない。船頭声を一段と張りあげて、
「飼い主はねえのか。