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かいじょうのみち

海上の道

柳田 国男

まえがき「海上の道」筑摩書房<br> 1961(昭和36)年<br> 海上の道「心 第五巻第一〇号・第一一号・第一二号」酣燈社<br> 1952(昭和27)年10月~12月<br> 海神宮考「民族学研究 第一五巻第二号」日本民族学協会<br> 1950(昭和25年)11月<br> みろくの船「心 第四巻第七号」酣燈社<br> 1951(昭和26年)10月1日<br> 根の国の話「心 第八巻第九号」生成会<br> 1955(昭和30年)9月1日<br> 鼠の浄土「伝承文化 第一号」成城大学民俗学研究室<br> 1960(昭和35)年10月10日<br> 宝貝のこと「文化沖縄 第二巻第七号」沖縄文化協会<br> 1950(昭和25年)10月20日<br> 人とズズダマ「自然と文化 第三号」自然史学会<br> 1953(昭和28)年2月1日<br> 稲の産屋「新嘗の研究 第一輯」創元社<br> 1953(昭和28)年11月23日<br> 知りたいと思う事二、三「民間伝承 第一五第七号」日本民俗学会<br> 1951(昭和26年)11月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 页

青空文庫

おり、またそこと交通のあった長崎の町にも少々は棲息していた。そうしてこの二つの土地以外では、まだあまり注意せられていないのは、この種の鼠のみは、何か陸上の移動に適しない特性があったものと思われる。ともかくも船と陸上との僅かな水面ならば、水掻きの有無にはよらず、たしかに鼠は泳いで渡っているのである。

或いはまたシベリヤから還ってきた人の話に、北満の或る大きな川筋では、毛皮のために多量の鼠を、水上で捕獲する職業があった。一つ一つの鼠は尻尾をつんと立て、力一ぱいに毛をひろげて、群をなして水を渡ろうとする。笠か何かで水面を強く敲くと、驚いて身をすくめるのでたちまち水に沈む。それを片端から簡単にすくい上げるというのは、珍らしい経験知識の実例だと思うが、それは何という種類の鼠か、究めて見ることができない。海でも或いは同じような生態があるのを、まだ我々は見聞する機会をもたぬのかもしれぬ。是からも大いに気をつけていなければならない。

ただし港内の船とか川の対岸とかは勿論の話、一里やそこいらの島から島へならば、行く先を目ざして思いきって飛び込むということも有り得るが、いわゆる絶海の孤島にも、時として鼠が渡って住んでいることがある。