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かいじょうのみち
海上の道
柳田 国男
まえがき「海上の道」筑摩書房<br> 1961(昭和36)年<br> 海上の道「心 第五巻第一〇号・第一一号・第一二号」酣燈社<br> 1952(昭和27)年10月~12月<br> 海神宮考「民族学研究 第一五巻第二号」日本民族学協会<br> 1950(昭和25年)11月<br> みろくの船「心 第四巻第七号」酣燈社<br> 1951(昭和26年)10月1日<br> 根の国の話「心 第八巻第九号」生成会<br> 1955(昭和30年)9月1日<br> 鼠の浄土「伝承文化 第一号」成城大学民俗学研究室<br> 1960(昭和35)年10月10日<br> 宝貝のこと「文化沖縄 第二巻第七号」沖縄文化協会<br> 1950(昭和25年)10月20日<br> 人とズズダマ「自然と文化 第三号」自然史学会<br> 1953(昭和28)年2月1日<br> 稲の産屋「新嘗の研究 第一輯」創元社<br> 1953(昭和28)年11月23日<br> 知りたいと思う事二、三「民間伝承 第一五第七号」日本民俗学会<br> 1951(昭和26年)11月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 页
一九
知識にはなっていたのである。
一九
千に一つと言ってよい幸福に恵まれて、無人の孤島に流れ着き、そこに食物を求めようとして測らずも稀なる世の宝が、さざれ小石のごとく散乱しているのを見つけたというなどは、一つの大きな民族の起原として、あまりにもたよりない夢か伝奇のようであろうが、正直なところきょうという日まで、是よりももっと有り得べき解説を、まだ私などは聴いていないのである。海のほとりに住んでおれば、稀には晴れた日に折々は思いを白雲の彼方に馳せ眉引く姿を望むことはあろうとも、何の望みがあって波を越え水平線を越えて、そこへ渡って行こうという気になろうか。仮に測らざる理由によって、一度はその岸に触れたことがあったにしても、再び家族をつれ、物種器什を船に積んで、来て住もうという決心をするだけの引力は何に見出し得たろうか。それよりも占いや夢の告げ、鳥や獣の導きによって、未来の安住の地を見立てたと伝える方が、まだよっぽど考えやすい。察するところ以前も今のごとく、人が多くて生まれ故郷に住み剰り、ないしは一方に強い圧迫があって、じっと落ちついてはいられぬ場合が多く、移動はすなわち人間の常の性となったごとく考えている人たちが、やや気軽に色々の動機を承認したのでもあろうが、互いに事態の想像しやすい陸続きの土地ですらも、元は各自