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かいじょうのみち

海上の道

柳田 国男

まえがき「海上の道」筑摩書房<br> 1961(昭和36)年<br> 海上の道「心 第五巻第一〇号・第一一号・第一二号」酣燈社<br> 1952(昭和27)年10月~12月<br> 海神宮考「民族学研究 第一五巻第二号」日本民族学協会<br> 1950(昭和25年)11月<br> みろくの船「心 第四巻第七号」酣燈社<br> 1951(昭和26年)10月1日<br> 根の国の話「心 第八巻第九号」生成会<br> 1955(昭和30年)9月1日<br> 鼠の浄土「伝承文化 第一号」成城大学民俗学研究室<br> 1960(昭和35)年10月10日<br> 宝貝のこと「文化沖縄 第二巻第七号」沖縄文化協会<br> 1950(昭和25年)10月20日<br> 人とズズダマ「自然と文化 第三号」自然史学会<br> 1953(昭和28)年2月1日<br> 稲の産屋「新嘗の研究 第一輯」創元社<br> 1953(昭和28)年11月23日<br> 知りたいと思う事二、三「民間伝承 第一五第七号」日本民俗学会<br> 1951(昭和26年)11月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 页

青空文庫

一一

いつかは必ず日本の最初の住民の、本家なりまた同族なりが、この中から見つかってくるものと当てにしていてもよいようだが、そうは行かないわけはまだ一つ、今自分たちが思っているような場合、すなわち以前の従兄弟たちが衰弱し散乱して、周囲のより強い部族に吸収せられて、言語や系統の意識を失ってしまっている場合があるからである。海を生活の場面とする大小の種族には、この実例は決して珍らしくない。ましてこの一つの天然の条件が完備した島群において、さしたる外部の擾乱もなく、数千年の生存を続けていたとすれば、いつかは現在のような浅ましい一億共喰いの状態に、陥って行くのも逃れがたい命数だったかもしれず、そうなるまいとすれば、今少しく知り且つ考えなければならない。どこか大陸の片隅に、この日本の紳士のような一団の人物が割拠して、『万葉集』に近い日本語でも話しつつ、久しぶりの再会を待っているかのごとく夢みることは、私などから見れば、まあ白山山中の大きな椰子の実のようなものである。

一一

人と椰子の実とを一つに見ようとすることはもとより不倫な話に相違ないが、島の人生の最初を考えてみれば、是もまた漂着以外の機会は有り得なかった。