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かいじょうのみち

海上の道

柳田 国男

まえがき「海上の道」筑摩書房<br> 1961(昭和36)年<br> 海上の道「心 第五巻第一〇号・第一一号・第一二号」酣燈社<br> 1952(昭和27)年10月~12月<br> 海神宮考「民族学研究 第一五巻第二号」日本民族学協会<br> 1950(昭和25年)11月<br> みろくの船「心 第四巻第七号」酣燈社<br> 1951(昭和26年)10月1日<br> 根の国の話「心 第八巻第九号」生成会<br> 1955(昭和30年)9月1日<br> 鼠の浄土「伝承文化 第一号」成城大学民俗学研究室<br> 1960(昭和35)年10月10日<br> 宝貝のこと「文化沖縄 第二巻第七号」沖縄文化協会<br> 1950(昭和25年)10月20日<br> 人とズズダマ「自然と文化 第三号」自然史学会<br> 1953(昭和28)年2月1日<br> 稲の産屋「新嘗の研究 第一輯」創元社<br> 1953(昭和28)年11月23日<br> 知りたいと思う事二、三「民間伝承 第一五第七号」日本民俗学会<br> 1951(昭和26年)11月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 页

青空文庫

一三 火と稲の伝承

夢としか思われなかった海の神の美しい乙女、それを母とする霊なる童児、如意の宝珠や知慧の言葉というような数々の贈り物なども、ただ卒然として人間の空想に生まれたものではなくて、何か基づくところの上代の事実、たとえば神聖なる誤謬ともいうべきものが、底に横たわっていたことに心付かしめるのも、この比較のお蔭ということができる。是が果して我々の島群のみに、許された機会であったかどうか。或いはまた一定の条件の下に、今は隔離せられている二つ以上の遠い島々の間にも、試みられてよいものではないかどうか。そういう問題に少しでも私は近よってみたい。

一三 火と稲の伝承

島々の記録記憶を見渡すと、最初ニルヤから渡って来たと伝えられる、至って重要なものが幾つもある。その一つ一つの記述は長くなるからできないが、現在自分のほぼ立証し得るものは、第一には火である。もちろんこれを史実と見る者はないであろうが、暁ごとに東の地平線を望んでいた島人等が、かしこには湧きかえる不断の火があり、テダ(太陽)はその中から新たに生まれ出るもののごとく想像し、また次々の経験によって、いよいよそれを確認するに至ったとしても不思議でない。