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かいじょうのみち

海上の道

柳田 国男

まえがき「海上の道」筑摩書房<br> 1961(昭和36)年<br> 海上の道「心 第五巻第一〇号・第一一号・第一二号」酣燈社<br> 1952(昭和27)年10月~12月<br> 海神宮考「民族学研究 第一五巻第二号」日本民族学協会<br> 1950(昭和25年)11月<br> みろくの船「心 第四巻第七号」酣燈社<br> 1951(昭和26年)10月1日<br> 根の国の話「心 第八巻第九号」生成会<br> 1955(昭和30年)9月1日<br> 鼠の浄土「伝承文化 第一号」成城大学民俗学研究室<br> 1960(昭和35)年10月10日<br> 宝貝のこと「文化沖縄 第二巻第七号」沖縄文化協会<br> 1950(昭和25年)10月20日<br> 人とズズダマ「自然と文化 第三号」自然史学会<br> 1953(昭和28)年2月1日<br> 稲の産屋「新嘗の研究 第一輯」創元社<br> 1953(昭和28)年11月23日<br> 知りたいと思う事二、三「民間伝承 第一五第七号」日本民俗学会<br> 1951(昭和26年)11月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 页

青空文庫

六

はあるにしても、命名の態度はおそらくはまるでちがっていた。すなわち一方は稀にしかこれを口にせず、または少なくとも戯笑の具には供しなかった。その痕跡がまだシビ・スビ・ツビの語には残っているかと思う。私が是らを第二次の発生とし、別に今一つの本来の名詞が、無ければならぬとする理由も爰にある。南方諸島において、最初にこの美しい宝の貝を緒に貫いて頸に掛けていたのは、君々すなわち厳粛なる宗教女性であった。そうして是がただ安産の守り、または児子の平安なる生育のみに、特効あるかのごとくには信じていなかったろうからである。

六

宝貝が大陸の奥の奥に流伝して、数十百年を経過するうちには、多分はあの採取時の美麗さは失われ、何故に是が宝であるかの理由が、海から遠く離れて住む者には、だんだんに不可解になったことは想像してよかろう。それを現今のように、単なる社会の約束と解することは昔の人にはできないから、次いで起こるものは呪禁の力、是を手に持つときは敵を制し、ないしは一身の生活を楽しく安らかにするという類の信仰でなければならぬ。世界の隅々に現われているこの観念の変遷については、すでに研究が進んでいるのだろうが、私はまだ知ることができない。