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かいじょうのみち

海上の道

柳田 国男

まえがき「海上の道」筑摩書房<br> 1961(昭和36)年<br> 海上の道「心 第五巻第一〇号・第一一号・第一二号」酣燈社<br> 1952(昭和27)年10月~12月<br> 海神宮考「民族学研究 第一五巻第二号」日本民族学協会<br> 1950(昭和25年)11月<br> みろくの船「心 第四巻第七号」酣燈社<br> 1951(昭和26年)10月1日<br> 根の国の話「心 第八巻第九号」生成会<br> 1955(昭和30年)9月1日<br> 鼠の浄土「伝承文化 第一号」成城大学民俗学研究室<br> 1960(昭和35)年10月10日<br> 宝貝のこと「文化沖縄 第二巻第七号」沖縄文化協会<br> 1950(昭和25年)10月20日<br> 人とズズダマ「自然と文化 第三号」自然史学会<br> 1953(昭和28)年2月1日<br> 稲の産屋「新嘗の研究 第一輯」創元社<br> 1953(昭和28)年11月23日<br> 知りたいと思う事二、三「民間伝承 第一五第七号」日本民俗学会<br> 1951(昭和26年)11月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 页

青空文庫

四

四

日本では六十年目に一度ずつ、地竹に花が咲き実を結ぶと言われている。竹の実は自然穀、またはジネゴという名もあって、少しは人も採って食べるが、大部分は野山の生物に委ねられる。鼠は一年に五、六度も子を産み、その子が数カ月でまた親になるから、竹に実のなる年はたちまち繁殖するが、米麦とちがって次の収穫がつづかず、活きて行けない状態がすぐに遣ってくるのである。以前『昔話と文学』という書物の中に、チュウドンブリという昔話を一つ載せて置いたが、薩摩の国の鼠たちと、長崎の港の鼠たちとが、互いに相手の国の様子をしらず、もしかあちらに行ったらまだ食いものが有ろうかと、大きな船を仕立てて海に乗り出したという風に、この昔話では語られている。それがちょうど肥後と天草島との間、鼠の隠れ里の沖あたりで行き合い、船をとどめて互いに行く先の様子を尋ね、向うにも食べる物がちっとも無いと聴いて、泣きながら一匹ずつ海に入ってしまうという話であった。是は勿論おどけ話だけれども、こんな奇抜な趣向は空には浮ばなかったろう。やはり鼠が欠乏に駆り立てられて、海に出て行くことだけはこの辺の人が知っていたので、こんな話も生まれたかと私は考える。