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かいじょうのみち

海上の道

柳田 国男

まえがき「海上の道」筑摩書房<br> 1961(昭和36)年<br> 海上の道「心 第五巻第一〇号・第一一号・第一二号」酣燈社<br> 1952(昭和27)年10月~12月<br> 海神宮考「民族学研究 第一五巻第二号」日本民族学協会<br> 1950(昭和25年)11月<br> みろくの船「心 第四巻第七号」酣燈社<br> 1951(昭和26年)10月1日<br> 根の国の話「心 第八巻第九号」生成会<br> 1955(昭和30年)9月1日<br> 鼠の浄土「伝承文化 第一号」成城大学民俗学研究室<br> 1960(昭和35)年10月10日<br> 宝貝のこと「文化沖縄 第二巻第七号」沖縄文化協会<br> 1950(昭和25年)10月20日<br> 人とズズダマ「自然と文化 第三号」自然史学会<br> 1953(昭和28)年2月1日<br> 稲の産屋「新嘗の研究 第一輯」創元社<br> 1953(昭和28)年11月23日<br> 知りたいと思う事二、三「民間伝承 第一五第七号」日本民俗学会<br> 1951(昭和26年)11月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,344 字 · 353 页

青空文庫

こんな大胆且つ法外な望みでもやっぱり容れられて、その女性を伴のうて故郷に帰り住み、それから後の生活は、我々の謂う竜宮女房の説話と同じである。竜宮女房の普通の形は、今日の嫁入婚に近く、妻の親里に行き通うということはないのだが、この花売竜宮入りだけは婿入に始まっている。是は説話を運ぶ人々の婚姻慣習の変化に伴のうて、追々と語りかえられる部分だったのかもしれない。妻が縁組の後に海の故郷に還って住み、次の年は三人の子が尋ねてきて、父を竜宮に誘うて行ったというような話、または海からきた美女と婚姻して、一人の女の子を儲けた夫婦が、後にその子だけを家に残して、妻の国へ行ってしまったというような話が、久しい間宮古島では信じられていた。もとよりこの掟をもって推すことはできまいが、母無くして生まるる子というものは有り得ない。現在はどんなにきたならしい子供として語り伝えられておろうとも、竜宮からもらってきた子供、すなわち我々のいわゆる海神少童は、やはり乙姫信仰の所産であって、この二つはもと互いに交渉していたのが、永い歳月を経てだんだんに、記憶の筋をたぐり難くなったものと思う。