Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme

Aozora Bunko

東京への旅

今のメリケン波止場の辺かと思うが、そこからハシケの出る桟橋がつき出て、はるか沖の方に船がかかっていた。たしかそれは日清戦争にも働いた「山城丸」で、二千三百トンだった。「二千トン以上の船にのるのだ」という誇りめいた興奮から、船に乗りこんでも、船酔いどころかすべてが珍しく、よく眠れないほどで、立入禁止区域に入っては一等船室の西洋人をのぞき見したり、すべてが意外のことばかりであった。これが私の世の中を見たはじめであった。

東京への旅

ここで思い出すのは、次兄通泰のことだ。兄は、その時分より前から桂園派の歌よみだったようにいわれているが、じつはそうではなかったと思えるフシがある。

というのは、私の家は貧乏だったので、何一つ家宝めいたものをもっていなかったが、たった一つ、母が嫁入りの時に持参した懐剣――といっても鎧通しだったが――があり、長い緒のついた、子供心に欲しくて仕様のないものだったから、北条の町を発つ前夜、私は母にねだってそれを貰いうけた。その懐剣を何とか役立ててみたいと、子供心に思って、宿で兄と床をならべて寝むとき、鞄からそれを取出して、兄に見えるように枕の下に入れた。