Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
引割麦のことにふれて
引割麦のことにふれて
私の故郷では、よく「津の国は七分の飯」といって、摂津の国は麦七分に米三分の混合率の食事を摂る所であると、貧しさの譬えに引いたものである。播州でも半麦飯を摂る家もあったが、この場合の麦とは裸麦で、それを引割にしたものを指していたのである。ところが十三歳の時、長兄のいる茨城県布川に移ってみると、驚いたことに、まだこの地方に裸麦は伝播しておらず、麦といえば大麦のことであり、引割麦という名称すら知る人もなかった。
大麦というのは食用に供するまでには非常な手数のかかるもので、臼で麦皮を除くために、麦つきという非常な労力を要する作業が、まずあった。よく冗談に「茶うけのないお茶を飲むのは麦つきよりコワイ」という言葉もあったほどで、コワイということばは、苦しいとでもいう風の下総地方の方言なのである。
麦つきの季節が訪れると、大家の広庭を借りて、屈強の若者らが五、六名でグループを組み、昼間は寝んでいて夕刻の涼しい時分から、大きな杵で夜を徹してついたものであった。もちろん女性もその手伝いをするのであるから、よくなまめかしいことも伴う、いわば土地の若い男女の夜会ともいうべきチャンスでもあった。