Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
播州の柳田
もうそれっきり一族のものがだれも行かないのである。
播州の柳田
昭和九年の四月なかば、久しぶりに故郷の山々の花を見歩いて、竜野に一泊し、それから斑鳩の御寺にはじめて詣り、同じ車で室の津まで出てみたら、ちょうど明神様の本祭の午後で、白粉をつけて眉墨を描いた女の子たちが、親や姉につれられて、一人ずつ御宮から降りて来るところだった。昔は必ずこうではなかったろうが、港はひっそりとして小舟の出入が少なく、沖にはただ折々の白い波頭を見るのみであった。崖の端まで出て左右の磯山を見渡すと、桜はもう過ぎて藤にはまだ少し早く、躑躅も薄紫のもちつつじ、私たちが小さいころに女郎つつじなどといったのが、松や雑木の間にいくらでも咲き続いている。これと関東の山々で野州花、またはヤシオというものと、色は同じだが形だけに違いがある。
汽車では片隅だけしか見て歩くことができない。今度は一つ海から見ようと浜に降りていって、明日の小舟を約束し、小さな宿屋を見つけて、この晩は泊ることにした。
できるなら備前の鹿のいる島のあたりまでもと思ったが、祭の疲れもあるか、そう遠くへは出ようとしない。