Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
母が亡くなってから、母のことを書く機会がたびたびありながら、どういうものか、とうとう活字にして世に示す折もなく、今日になってしまった。それでいまここで、母の性格について記しておくつもりになったわけである。
母は私ら兄弟五人を育て上げて世に出すのに一生懸命であった。その気疲れもあって、かなり早く年をとり、一時ヒステリイ気味になったことさえあった。晩年の母しか知らない人たちからは、いかにも気難しい人柄であったように見られる傾きがあった。しかし私の家にとっては大変な功労者で、世間知らずの父に仕えながら、私たちを東京に出して勉強させてくれた。ことに私自身は小さい時から母の腰巾着で、播州でいうバイクソというのにぴったりあてはまる立場におかれていた。バイというのは、海からとれる長い螺貝のことで、その中身の最後にくっついていて、なかなか母貝から外へ出ない柔い尻尾の部分をバイクソというのである。
そんなわけで、私は幼い時から何でも聞きかじって知っていた。母は例えば近所の夫婦喧嘩を仲裁する特殊な才能をもっていた。夫と喧嘩をして、私の母のところへ泣いて訴えて来た細君をなだめたりすかしたりして、お終いには笑って帰すという母の腕前はたいしたものであった。