Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
それから京に上って皆川氏の門に学び、その推薦を受けたということもあの碑文には見えない。井上の兄が北条の墓所に詣でて感じて来たことは、必ずしも若死した学徒の徳望ではなくて、それを故山に迎え取って安らかな眠りに就かせようとした、近親の人々の好意であったらしい。
久しく私はこの菊ヶ谷の墓所にも詣らぬので、今はただ少年の日の記憶を辿るばかりだが、尾芝家で医を業とした宇内という人は、あるいは児島尚善氏と同じに、何代か一つの通称を世襲したのかもしれぬ。そうして私の祖父の父の他に、もっと大きく働いた宇内があったのではなかったか。母からきいたと思う逸話がなお二つある。一つは今は酒見寺の境内の十王堂よりは大分奥の方に、私の小児のときすでに古び朽ちていた十王堂があり、格子の中を覗くと青い錦のどん帳がかかっていた。この堂は、古いおばあ様の代に一建立で建てたもので、その帳の青地の絹はその人の帯であったという話。それから今一つは祖父が壮年のころ、叡山の奥の院、横川の寺に何とかいう名の老僧があって、それが、幾代か前に尾芝から出た人というので対面を行った。人を唐紙障子に向って座らせて、障子を次から次と左右から引いて開けると、奥の正面にその高僧が座っておられた。