Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme

Aozora Bunko

七つ八つから十歳になるころまで、私は何度となく神隠しの話を耳にした。辻川の鈴の森神社は、丘陵の傾斜面の一部が段々になった側にある。その突端で村の者がいっしょになってお宮を拝むようになっているので、神隠しの話が生れるのに都合よく出来ていた。夕方、子供が村のどこかで遊んでいると、白髪のお爺さんが出て来て、「我は鈴の森じゃ、家で心配しているから、はよう戻れよ」と親切にいわれたから帰って来たという話を、子供心に本当のことのように思っていた。「ああ、それは明神さんに違いない」といったような話を、いくつもいくつも聞かされた揚句のことだから、小さい私としては無理もなかったのかと思う。

私より三つ年下の弟が生れる春先の少し前であったから、私の四つの年のことであった。産前の母はいくらかヒステリックになっていたのかもしれないが、私にちっともかまってくれなかった。

ある時、私が昼寝からさめて、母に向って「神戸に叔母さんがあるか」と何度も何度も聞いたらしい。母が面倒臭いので「ああ、あるよ」と答えたところ、昼寝していた私が急に起き上って外に出て行った。神戸に叔母などいなかったのに、何と思ったか、私はそのままとぼとぼ歩き出して、小一里もある遠方へ行ってしまった。